桃大福のメモ

感想文みたいなものです。

テレビの向こうのアイドルにはなれないけれど-『オーディションから逃げられない』

『オーディションから逃げられない』(桂 望実)

オーディションから逃げられない

オーディションから逃げられない

 

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新卒の就活がはじまりましたね。人事関係の仕事をしている友人が「2019年入社の新卒、大変だった!全然採用できなかった!」って嘆いてました。売り手市場、すごい…。今年もそんな感じで、学生さんにとってはよい状況なのかな?

 

私が就活したのは結構前で、リーマンショックの影響がまだまだ続いている時期でした。だいたいの年齢がばれますね。自慢じゃないんですが、いえ、やっぱり自慢しますが、私は100社以上にエントリーし、落ちました。リクナビのボタンをポチ、だけの企業はカウントしていません。エントリーシートなりSPIなり、一次選考に参加した企業の数です。盛ってません。ほんとに100社以上です。

これだけの企業に落とされるというのは、リーマンショックのせいではなくて、明らかに自分のせいです。突出する能力のない、勉強と部活とアルバイトをそれなりにやっていただけの私が、それに加えて性格もちょっと…という私が、簡単に内定をもらえるわけなんてなかったんです。反省しています。

それでも、同じようなスペックの友人や私より成績が悪く不真面目だった知人(失礼)が、苦しいながらも内定を獲得してゆく。私は一向に内定が出ない。もうほんと、辛かったです。

結局、その就活の時期に私の内定は出ませんでした。その後いろいろあって今は定職に就いていますが、あの時私は選ばれなかったんです。1社からも。

 

中学生と高校生のとき、あるスポーツをしていました。私は一度もスターティングメンバーになったことはありません。控えとしてベンチには座っていましたが、公式戦に出場する機会はありませんでした。真面目に練習をしてきたけれど、一度も選ばれませんでした。

 

数年前、好きになった人に3回連続でふられました。3人連続です。私は恋人として、選んでもらえませんでした。

 

 

 人生はオーディションの連続だと思います。

 本気でそう思っています。

『オーデションから逃げられない』p3

 

“選ばれない女性”の展子。自分の好きな人は自分の友人のことを好きになってしまう、美術部に入ったけれど作品で賞がとれない、内定がでない、夫の会社が倒産する… 自分のことを“ついていない”と思っている。それでも生きていくうえで、誰かに選ばれたり評価されたりすることは避けて通れない。日々、オーディションの連続。そんな女性の物語です。

 

選ばれる人っていますよね。テレビに出ている女優さんやアイドルを見ていると、ああこの人は選ばれる人なんだなあ、って思います。もちろん彼女たちには彼女たちなりの努力があるとは思いますが、美しい顔やスタイルはある程度生まれ持ったもので、彼女たちにはそれがあった。そして私にはそれがない。

 

私はすっかり“選ばれない癖”がついてしまっているので、最近は選ばれないことによるダメージは少ないのですが、たまーに、どうして私は選ばれる星のもとに生まれてこなかったのかなーと、ぼんやり思ったりはします。

 

物語の主人公・展子は結局、自分なりの幸せを見つけます。

 先のことはわかりませんが、選ばれなかったことも楽しめるような、そんな人になりたいと思っています。

『オーデションから逃げられない』p341

 

物語の終盤は予定調和な感じで、まあこんな感じに幸せを感じていくのがいいよね、というのが感想です。歳を重ねて、いろんな経験をして、こういう形で落ち着くよね、という感じ。穏やかな展開。

 

 

こういう“選ばれる・選ばれない”の話をすると、夫は厳しい顔をします。そうですよね。私は夫に選んでもらえたんだから。テレビの向こうにいるアイドルのようには選ばれないけれど、夫からは伴侶に選んでもらえた。それは私にとって幸せなことでした。(“選んでもらった”と書いていますが、もちろん夫はそんなこと言いません。私があえて書いているだけです) 

 

「ぐだぐだ言ってないで選ばれるように努力しなよ」ごもっともです。

「自分が選ばれるフィールドで戦いなよ」ごもっともです。

でも、人が選ぶもの、ペーパーテストじゃなくて就活の面接とか何かの作品とかそれこそオーディションとかって、多かれ少なかれ選ぶ人によって判断基準が異なっていて、理不尽なこともあると思うんです。そういう場面で、“選ばれる”人と“選ばれない”人がいて、ああ自分はいつも選ばれない側の人間だなあと思ってしまうことがある。ほんとはそんなこと(いつも選ばれないなんてこと)ないはずなんだけど。

 

長々と“選ばれる・選ばれない”ことについて書いておいてあれですが、私としては、私の人生としては、選ばれたとか選ばれなかったとか意識しなくなることが幸せかなあと思っています。日々オーデションな人生は、ちょっと遠慮したい。精進しなくちゃ。

 

“選ばれない”話で思い出すのは、はせ おやさい さんのエントリー。“選ばれない”ことに悩んでいた当時、とても勇気づけられました。

hase0831.hatenablog.jp